私が初めて彼女と出会ったのは、とある展示会でした。
小さなブースに女性がふたり立っていて、革アイテムをずらりと並べて、ひとつずつ丁寧に紹介していました。
翌年の展示会でも同じようにふたりの女性がまた小さなブースでずらりと並んだ革製品を前に立っています。
新しいアイテムに私の手が伸びました。
商品の紹介をしてもらってるうちに私が身につけているアクセサリーの話題に。
それは、ある素敵なジュエリーデザイナーとの出会いをきっかけに、もう9年もの間毎年一つずつデザイナー本人にお見立てしてもらって買い足しているものです。
そのデザイナーとお知り合いだそうで、話しが盛り上がりました。
そんな以外な共通点から、ゆったりとした人柄や雰囲気が心地よく、そんな方の作るものをもっともっと知りたくなりました。
で、早速行ってきました、アトリエ見学。
場所は横浜市内、のどかな景色が広がり新緑の香り漂うのんびりとし場所にありました。
プレハブ小屋をすべて手作りでリノベしてアトリエにし、月に1日一般の方々にショップとして解放しているそうです。
とても柔らかな印象の土平さん。
初めましてな事を忘れてしまうくらい、親近感があってこちらの心もあっという間にパカっと開いてしまいました。
.URUKUST(ウルクスト)というフランド名、ロゴマークについて聞いてみました。
まず、[.]ドットから始まっている不思議なロゴ、「ウルクスト」という東欧やドイツ語の様な言葉。
実はこれ、逆さまに読むと TSUKURU.(作る) となります。
だから[.]ドットが前にあったんですね。
そしてロゴマークである手を握っている姿は、作り手である土平さんの実際の手をスケッチしたものだそうです。
まさに土平さんご自身の手で作っているアイテムの証って事ですね、お見事です。
このブランドを初めて5年と、まだ若いブランドではありますが、土平さんと革のストーリーがまた素晴らしい。
幼少期から革を触るのが大好きで、お財布やバッグ、小物入れなど自分で革を縫ってオリジナルのものを作っていたそうです。
ブラスバンド部だった時代も、インテリアやプロダクトデザインの勉強をしていた時代も、常に継続していた趣味が革モノ作りだったそうです。
その後プロダクト関連の会社に就職したり、そこから別の会社に転職した際にも、何故か革を扱う事業がスタートし、抜擢されたり、、、。
土平さんと革は切っても切り離せない運命、まさに天職だと気付いたそうです。
そして .URUKUST が生まれました。
.URUKUSTの初めてのアイテムは手作りキット。
土平さんは言います。
昔の人は自分で裁縫をしていました。自分で作るからこそわかる仕立ての良さや質の良さがありました。そういう事をしなくなった現代では、善し悪しを自分で判断できる人が少なくなっているのではないかと。
どこのブランドかとか、値段が高いから良いものだとかが判断基準となっている。
なので、実際に触ってもらって、つくってもらって、作る楽しみと同時に仕立てる難しさや質の違いを知ってもらいたい。
手作りキットを通して革の良し悪しを知ってもらいたい、作る楽しさを知ってもらいたい。と、積極的にワークショップを開催したり、美術大学で講師をしたり、大好きな革のことを知ってもらう活動をしています。
幼少期からずっと革を触ってきた土平さんは、触っただけでなく、革を切る際にもその革の善し悪しがわかると言います。
なので革には人一倍こだわりがあり、なめし加工も「ここでないと」という職人さんになんども頼み込んで受けてくれるまで通ったそうです。
こだわりを通り越して、もうそれは革オタクです(笑)
そして.URUKUSUTの革製品のコバは全て磨き仕上げ。
コバとは革の切り口の事で、そこを見ると革の善し悪しがわかると言われています。
コバの処理には様々な手法があるのですが、削ってやすって塗り込んで磨き上げる工程を何度も繰り返すコバ磨きには大変な技術と手間がかかりますが、仕上がりがとても自然で耐久性もぐんと上がります。
それは「熟練職人がいる証」、コバを磨くと言う事は「上質な革を使っている証」なのです。
私が惚れたのは、縫い目を極力控えたミニマルな構造でした。
厚くしっとりとしたナチュラルな革は縫い合わせる事をせず立体的に組み立てる事で、丸みを帯びたやさしいフォルムになります。
スタートが手作りキットだった.URUKUST、生まれてくるアイテムも極力無駄なパーツを省き、手作りしやすい構造になっている、究極で上質なミニマルレザーアイテムです。
.URUKUSTのアイテムはこちらから→ DRESSENSE online shop
入り口前にて土平さんと。
中庭では大きなブリキの入れ物に多肉植物の寄せ植えが。
お昼ご飯は隣にある旦那様の家具工房のスタッフとランチ当番制にして天気の良い日はみんなで外で食べているそうです。
珍しい黒の革すき機。
相当待って手にいれた代物だそうです。
良い風貌をしていますね。
道具たち。
幼少時代に買った星型のポンチ(革に穴を開ける型のようなもの)を発見しました。
実際に型抜きの工程を体験させてもらいました。
結構力がいるんですね。ちゃんと綺麗に抜けませんでした。力仕事です。
実際に土平さんが使っている名刺入れ。
焼けて艶が出て、良い感じです。
柔らかすぎないのでぺっちゃんこになりません。